UFOとは未確認飛行物体である。多くのオカルティストは宇宙人の乗り物であると考えている。しかし、確証されたことは一つもない。UFOの墜落した残骸話も、やはりでっち上げや誤認くさい。それだけでなく、宇宙人の行動も余り合理的とは言えないのである。
 日本ではUFOが余り流行らなかった。そして70年代のコンタクティーの記録を見ると、ブームの初めから霊媒のような感じの人間が多かったのである。そのブームはアメリカからの輸入である。そして、1990年代に日本ではUFOは見捨てられ、雑誌『UFOと宇宙』は廃刊になって、替わりに古典的な霊媒全盛になって今に至る。
 一方、本場アメリカの状況はどうだろうか。
 戦後、有名なコンタクティーアダムスキーの宇宙人は、理想的な人間型で金星からやってきていた。しかし、時代が下るにつれて、やってくる星が遠くになって、非人間型が増えてきたのである。そして、現在のアメリカの宇宙人はグレイ型一色になってしまった。グレイはアメリカ人を誘拐する代表的な宇宙人である。しかし、1960年代や1970年代は、グレイの他に多様な宇宙人がいた。


◎1998年11月3日 『異星人遭遇事件百科』郡純(1993)太田出版
 円盤につれこまれ、奇妙な女性とセックスしたブラジルやメキシコの例など、宇宙人誘拐事件を中心に変な事件がいろいろ書いてあって面白い。
 まあ、いつものことだが、何でもかんでも宇宙人のせいにするところがUFO信者としての特徴がビンビンと伝わってくる。たとえば「新婚女性に興味を示す宇宙人」などの事例は、宇宙人による誘拐事件というよりも、黒魔術の呪いを思わせる事例だ。牡牛座からきた牛のような宇宙人にリンチにあったという例も、「ホンマかいな!」と思わせる変な事件だ。宇宙人に頭に埋め込まれた物(インプラント)のせいで精神病院に入院して自動書記を行った人の話、ブラックメン、火の玉に襲われた少年、キャトルミューテーション。こじつけめいた説明も多いが、なかなか切れる説明もある。面白い、初めは読んだら捨てようかと思ったが、とっておくことにした。
 最後は宇宙人とアメリカ政府の密約の話、「1999年地球開国説」で終わっている。ほんまかいな!という気もするが、妙な真迫性がある。
 付録に数種類の宇宙人の特徴とその言葉まで書いてある。至れり尽くせりだ。これを見ると現在のグレイ型は非常に少ないことが分かる。
(追記)当然のことだが、この宇宙人が公然と姿を現して、「1999年に地球が開国する」という予測は外れた。
(終わり)

○2001年■月○×日 ジョン・リマー著 秋山真人訳 『私は宇宙人にさらわれた!』三交社"The evidence for alien abductions" (1984)
 古本屋で100円で買ってきた。大当たり。ただの宇宙人に誘拐された経験の羅列かと思ったら、そうではない。宇宙人の誘拐であるという予断を前提としていないばかりか、全体的に断言が控えてあり、冷静に分析してある。結論は断言していないものの(超常現象を必ずしも否定しない)心理的な現象であるという方向を向いている。先日買った『アブダクション』の著者ハーバード大学精神医学のトランスパーソナルの教授マックは、完全に宇宙人説を盲信していたのに対し、なんたる違いだろうか。社会的な地位と分析能力は必ずしも比例しないことの良い例。
 この本が書かれた時代(1970年代)からアメリカでは豊富に誘拐例が存在したことは驚きである。また、やはり私の印象も宇宙人による誘拐は物理的というよりも心理的なものであるいう意見に傾く。もっとも、この本自体がそういう方向に構成してあるのだが。
 リマーは幾つも鋭い指摘をしている。
 たとえば、宇宙人の姿が多種多様である。細部まで同じものがほとんどない。例えば手の形などは人間なら決まって5本だが、そのような微細な点で同じ宇宙人がいないのである。また、体験者に女性が多く、心理的な悩みを持っているらしいなどだ。
 ただし薄い本だけあって、詳しい情報、例えば誘拐前後期の超常現象などについての記述がほとんどないのが欠点であり、宇宙人誘拐が物理的でないとしたら何なんだと、よく分からない印象がぬぐえない。また、ケネス・リングが『オメガプロジェクト』で言っているように臨死体験との類似性は確かにあるように思えた。(終わり)

○2000年6月●×日 ホイットリー・ストリーバー著 訳『コミュニオン』(1994)
 この本は大変怖い。
 数年間探していたが、帰省したおり、古本屋で見つけて購入。宇宙人に誘拐された体験をつづって、全米ベストセラーになった本。この本こそ、現在のグレイ型宇宙人による誘拐ブームをアメリカで決定づけた本である。
 全体的に押さえたトーンで、UFO信者や反信者のような断定調が少なく、いろいろな常識的な仮説に目配せをしていて好印象を受ける。もっとも、ストリーバーは自分の体験に基づいて、何か超自然的なことが起こっていることを疑っていないが。誘拐に先立つ予兆らしきものについても触れてある。たとえば防犯機器の異常などであり、これは典型的な電磁異常である。
 ストリーバーは、もともとかなり有名なSFホラー作家であり、この著作以後、UFO関係の多くの本やマスコミ活動など、ずいぶん儲けているらしい。そういうことを考えれば、信憑性を疑う者も多いだろう。正直な話、この本は筆力があり読んでいて大変怖い。だが、これは「実話」だと銘打っているからで、ホラー小説としてはまったく怖くない。宇宙人は大した危害を加えないからだ。(終わり)


 宇宙人にさらわれたと言う実例の多くを見たい人は、ハーバード大学の精神科の教授ジョン・E. マック『アブダクション―宇宙に連れ去られた13人』を見れば、多くの詳しい例が書いてある。マックは、前世療法のワイスと同じで、被験者の逆行催眠を完全に信じている。その逆行催眠でワイスの被験者は前世を語り、マックの被験者は宇宙人の誘拐を語ったのだ。
 そして、ワイスと同様、被験者に取り込まれたのだろう。