日本では守護霊は、祖先の霊とだいたいは相場が決まっている。むろん、例外もあるが、その個人にゆかりのある過去の人間の霊である。欧米では守護霊は余り一般的ではなかったのだが、最近はガイドとか称する存在に触れるオカルティストが増えてきた。ところが、このガイドに奇妙な例があるのである。
 前に紹介した体外離脱が自由にできる能力者のモンローの体験は面白い。彼の本はわかりにくいが、要約すれば次のようなものである。二人の霊的なガイドに付き添われて、前世の臨終を体験した。そこでは彼は戦士であり、胸を貫かれて死んでいた。しかし、死んだことが分からない前世の自分は、肉体から離れても必死になって戦いを継続しようとしていた。そのとき、ガイドの一人が「もう死んでいるのだから、闘う必要はない」と言ったのである。これだけなら、単なる前世の体験である。
 その後、別の時に体外離脱をすると、一人のガイドに付き添われて、再びあの死亡時の前世の過去へ戻ったのだ。しかし、それは死んでもなお闘おうとする過去の自分の霊を見守る立場だった。すると、付き添いのガイドは「もう死んでいるのだから、闘う必要はない」と言ったのである。自分は黙っていた。
 さらにその後、また一人のガイドと、前世の死亡時に戻った。そして、また死んでもなお闘おうとする前世の自分の霊を見たのである。そのとき、自ら「もう死んでいるのだから、闘う必要はない」と言ったのである。もうひとりのガイドは黙っていた。
 一体これはどういうことなのだろうか。要するに、二人のガイドは自分自身の魂であり、時間を超えてきた 別の時間の魂だったのである。全くもってSF的だ。
 この例は驚異的であり、守護霊やガイドとは何なんだと言う疑念をもつだろう。このような例が存在するので、ガイドは他者の霊なのではなく、自分自身の霊なのだという意見もあるのである。例えば「ハイヤーセルフ」とかいうのがそうである。これが欧米人にとっての守護霊に当たるガイドの例なのだ。
 実は、この例の含意はかなりはっきりしていて、フロイトの言うところの意識のイド、自我、超自我の三分類に似ていることが分かる。一般的にだが、欧米人は名門でもない限り、祖先をそれほど大切にはしない。先祖代々の供養をするという庶民は少ないのだ。だから、先祖が見ず知らずの子孫の守護をするという感覚もピンとこないようだ。欧米人の考えるガイドも、祖先霊ではなく、天使のような自分の一族と余り関係のない高次霊や、ハイヤーセルフのような自分自身の一部なのである(さすが自立自助の国である)。
 この例を考えれば、能力者によってガイドや守護霊の類の性質まで、全く異なることが分かるだろう。あの世も守護霊も能力者の持つ文化に、ほぼ完全に依存している。