井村宏次『スーパーサイエンス』を読む。ウィルヘルム・ライヒについての章もあった。今日は彼について書いてみたい。
 ウィルヘルム・ライヒ精神分析学者であった。フロイトの弟子である。フロイト精神分析は性欲とそれによる精神的な動因を重視していた。ライヒはそれをもっと進めたのである。性の不満が直接的な精神疾患につながると考えた。確か「権威主義的性格」の提唱者である。フロイトと確執があったと言われている。
 彼はフロイトと同様、ユダヤ系ドイツ人であったのでナチスに追われてノルウェーに行った。そこで性的なオーガズムと精神の研究に邁進していた。代表的な著作は『性と社会の革命』?である。
 あるとき煮沸した肉汁の入ったシャーレの中に動き回る小胞を発見した。彼は自然発生的な原始的な生命だと考えバイオンと名付けた。こんな半世紀以上も前に捨てられた自然発生説が学会に受け入れられるわけはない。だが彼は研究を続けた。そしてある時、シャーレの中にバイオンとは明らかに異なる、激しく動き回る青く光る固まりを発見した。その放射は彼の目や顔を痛めるほどのものであった。彼は、この危険な物を金属でシールドし、オルゴンと名付けたのである。これは生命の根元エネルギーに違いないと考えたからだ。そして、それを集めて増幅するボックスを創ったのだ。それが有名なオルゴンボックスである。もともと精神分析医だったライヒは、このオルゴンボックスとオルゴンエネルギーを使って、患者に治療を施すのである。催眠の元祖ともいえるメスメルに非常に似ている。
 研究の過程で、オルゴンエネルギーは何故か水に吸収されると言うことが分かったそうだ。前に霊が水が好きらしいことを述べたが、これも似ていることに注目したい。
 ライヒはその後、アメリカに移り、研究を続けた。同じユダヤ系ドイツ人の伝で強引に頼み込んで、オルゴンをアインシュタインにも見せたと言う。アインシュタインは無言だったと言う。見えなかったのではないかと私は疑っている。
 その後、核物質とオルゴンの相互作用を研究する過程で、核物質が死のオルゴンを放つことを発見し、研究員に病気が流行り、研究所の上に居座る死のオルゴンに満ちあふれる黒雲を、雲破壊装置で破壊した。この気候制御装置クラウド・バスターは相当な成果を上げたという。
 そして、彼はたびたびUFOを見るようになる。彼はUFOは死のオルゴンをまき散らして地球の環境に被害を与えていると真剣に考えるようになった。UFOを撃墜しなければならない、彼は狂っていった。
 ライヒはオルゴンエネルギーの不足がガンなどの病気の原因だと考えていた。そしてその装置で患者を治療していたのである。アメリカ食品安全局(FDA)はライヒを逮捕した。彼は監収中に憤死する。
 これが彼の人生であった。一体ライヒの発見したオルゴンエネルギーは何だったのだろうか。


 毎度のことだが、私の意見は、ライヒは自覚しない非明示型の霊媒だったのだと考える。ライヒが見たバイオンは、煮沸に生き残ったただの細菌だった可能性が高いが、オルゴンはたぶんオーラ視の類だろう。アインシュタインには見えなかったらしいのだし。オルゴンボックスという奇妙な装置を使って治療を行ったことも、彼の理論が正しいと言うよりも、現在の呪術医に似ている。たびたびUFOを見ていることも、オルゴンが水に吸収されるというのも、彼が霊媒であることに傍証に思える。また実際に気候を変えたことも、珍奇な装置であるクラウドバスターがオルゴンエネルギーで天候を変えたというライヒの考えよりも、ライヒ自身のもつ霊力の発露だったのだろう。