前に紹介した、ジョセフソン他『意識が開く時空の科学』には、早坂先生の論文も乗っている。右回りのコマが軽くなると言う有名な実験を行った研究者である。論文自体は手短にまとまっていて、好印象ではある。しかしコホモロジーの適用する部分が分からなかった。ギャップがあるのではないだろうか。
 彼の単著を紹介する。


○2001年5月2×日 早坂秀雄『反重力はやはり存在した』
 右回りのコマが軽くなると言う有名な実験を行った研究者の著書を読んだ。常識的な人かと思ったら大間違い、何でも信じる人である。アダムスキーを熱烈に支持するし、怪しげなUFO情報、反重力情報を何でも信じていることは明らかだ。常識的には内心信じていても、表に出さないのが「普通の科学者」だろう。それだけでなく、どうも理論も整合性も余り考えていないようだ。重力や電磁力学の多くの小数学説や実験を採り上げているが、よく知られている他の物理法則や原理との整合性などを余り考えていないらしい。それらの学説は、明らかに運動量保存則や等価原理などと当たっているように思えることが少なくないからだ。もちろん、運動量保存則や等価原理は破れていても良いが、それに対する言い訳があって当然だ。しかしほとんど触れられてもいない。また、スカラー重力波は距離による減衰なく超光速で伝わるというロシアの物理学者たちの主張を真剣に採り上げているが、距離による減衰がなければ、宇宙全体からくる信号の総計が発散してしまうし、超光速なら因果率の問題にも突き当たるはずだが、何の説明もなければ、どうやら疑問も感じていないらしい。
 さらに、採り上げている異端学説は詳細がはっきりしないだけでなく、互いに矛盾しているとしか思えないが、早坂博士は広い心で分け隔てなく受け入れている。私も、少数意見に対してオープンマインドを自認しているが、早坂博士にはとてもかなわない。
 ところで、ロシアの科学者や清家博士などが利用しているメビウスコイルは、ただ導線を二重に巻いただけのものと、どこがどう違うのか判然としない。確かに電気を通す導線部分は、円に線分を捻って張り合わせたファイバーバンドルの構造をしてはいるが、そこを流れる電子の動きを考えると結局ただの二重巻の導線なのではないのか。「メビウスの輪」という魅惑的な言葉に幻惑されているだけなのではないかという疑念が起こる。これを含めて、早坂博士の主張は、細かい間違いや大きな論理のギャップが多いように思える。それだけでなく、物理の様々な用語の概念を正確に理解していないので使っているようだ。例えばスカラー重力波スカラー電磁波など概念を使っているが、どうしてスカラーなのかの説明をまったくしていない。
 ついでながら、辺境科学(マージナルサイエンス)ではフリーエネルギーと反重力は関連しているという意見が多く、早坂博士もそう考えているようだ。だが、どう関係しているのだろうか? どちらも主流物理学では認められていないという「学会内の非主流派どうしの社会的な関係」しかないように思えるが。
 このように矛盾するように見える理論や主張を何でも信じる傾向は、オカルティストやその周辺の人間に顕著に見られる傾向だ。オカルティスト、宗教家、霊能者超能力者の類や、周辺科学者やトンデモ発明家などには二つの方向がある。詐欺師ほら吹きと信者の2成分である。ドクター●松は前者の成分が強いと考えざるを得ない。永久機関ノストラダムスエンジンなどの発明を見れば分かる。だが、早坂博士は後者だろう。(終わり)


 今見ると酷評だが、理論も含めてアイデア自体は(科学の通説から見れば異端だが)面白いと思う。
 そもそも早坂博士は、なぜ右回りと右回りのコマの落下速度をはかるという奇妙な実験を行ったのだろうか。もともと、UFOなどの推進原理を探し求めていたのではないのか。
 ジョセフソン他『意識が開く時空の科学』には、フリーエネルギーの研究も載っていて、理屈はともかく、読ませてくれる。